なぜかマイクロソフトの協力によりできた “Future Vision” というSFアンソロジーがあるんですが、なかなか面白かった。MSの協力のもと、ちょっと近未来的なテクノロジーをリアリスティックに描く作品が揃っている。Amazonなどの電子書籍ストアで無料で頒布されている(Google Play booksがスルーされているのは個人的にはちょっと悲しい……)。
全部で9人の短編(うち一本はコミックですが)が収められていて、邦訳作もある作家も多い。個人的に面白かったのは……
Seanan McGuireの “Hello, Hello” はジェスチャ認識を援用したコミュニケーションツールについての話で、ネタは読んでいればすぐわかるけれど、なかなか良い扱いだった。オチもよい。なお著者は Mira Grant (ミラ・グラント)名義での著作もある。
ナンシー・クレスの “Machine Learning” は直球のタイトルで、コンピュータが人間の感情を理解するという研究がテーマになっているが、それは……という一捻りが加えられている。主人公の造形が生きている。
Blue DelliquantiとMichele Rosenthalの “A Cop’s Eye” はまんがで、近未来にコンピュータと情報ネットワークで強化された警官がある家出少女の捜査をする、という話。ストーリーは他愛もないけれど、であるがゆえに「近未来ではふつうの道具として使われているもの」を鮮やかに描き出す。
ロバート・J・ソウヤーの Looking for Gordo は異星人(のコンピュータ投影)が裁判に持ちだされるという変な展開でかなりほかと雰囲気が違うような出だしだが、実は近いテーマであることが示唆される(が、裁判という道具立てはあんまり活きていない)。
アン・レッキーの “Another Word for World” は機械翻訳をテーマにしているが、他の作品とちがって遠未来であるためガジェットの性能がちぐはぐである気がするが、まあ面白かった。
いちばん面白く読んだのはアン・レッキーかなあ(最後なので強く記憶に残っているというだけかもしれないけれど)。次はナンシー・クレスあたり。