マーサ・ウェルズ『マーダーボット・ダイアリー』

『マーダーボット・ダイアリー』

「ふつうにおもしろい」本でとてもよかった。

自称「殺人機械」(マーダーボット)である主人公の警備ユニットが、宇宙のあちこちのいろんな事件に巻き込まれる連作中編シリーズ。上下巻で4本の作品が収録されている。というか、もともと中編として発表された4作品をまとめた一冊というか。ストーリーはゆるやかにつながっており、4本目でいちおう完結っぽい雰囲気になっている。

主人公のマーダーボットは人間の脳や肉体なども使われた機械であるようだが、一般的には人間とはみなされていない企業の所有物で、様々なプロジェクトにリースされている。ところがマーダーボットは自分で制御プログラムをハックしていて自意識をもち、自分の意思で行動できる。そのことを隠してふつうの警備ユニットとして活動していたが、いろいろあって宇宙のあちこちを漂流し、行く先々で遭遇するトラブルを解決していく。これをマーダーボットの視点で描くといった体裁になっている。

自分のことを「弊機」とよび、あくまでも機械であって人間ではないというスタンスを崩さない主人公のすこしひねくれた自意識が、とてもよい。アクションもあってテンポもよく、もともと複数の中編をまとめただけあって話が比較的すぐ盛り上がっていいかんじに終わる。気軽に読める娯楽小説として楽しめる。とてもよい。

あとまったく個人的な話なのだけど、こういう気楽な翻訳娯楽小説がまだ楽しめたことがわかったのも収穫だった。なんか、いかにもアメリカ人が書いたような設定を英語ではなく日本語に翻訳された文で読むのがきつい、という体験を少し前にしたことがあり、気軽な娯楽小説だからこそきついのかなあ、こういうやつはもう日本語では読めない体になってしまったんだろうか……と悲しくなっていたのだが、本書は楽しめた。それがうれしかった。

本書の訳文は、個人的にはやっぱり、まったくひっかかりなく読めるということはない。でも質は高いし読みやすい。とはいえ訳の質よりは、内容の違いのほうが大きいような気もするな。よい娯楽小説だということでしょう。

なおこのシリーズ、これで完結かと思ったら5作目も出てるのだね。英語で読んでみるかなぁ。

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