『海街diary』が9巻「行ってくる」にて無事完結とあいなりました。最後の方はこう、予定調和的ではあったけれども、とにかく、やっぱり、ほんとうにおもしろい漫画でした。
これは1巻から読み直さなければ、という気分が高まり読み返していたのですが、読んでいて気づいたことが。
パカパカ二つ折りケータイつかってるじゃねーか!ということですね。左画像は1巻冒頭のシーンですが、ちょっと懐かしいデザインの二つ折り携帯電話。いっぽうシリーズ終盤(右画像、7巻より)はスマホを使ってLINE(のようなもの)のグループチャットに完全移行してました。
思い返してみれば海街diaryの第1話が雑誌掲載されたのは2006年。今のようなスマホが存在していなかった時代なわけで、12年の歳月というのはそれほどの違いを生むわけでした。それにしてもどういうふうに移行していったのだろうか、というのがちょっと気になったので集めてみた。海街diaryにおける携帯活用の歴史。
1巻 (2007年刊行)
ツイートでも引用したこのコマ。1巻冒頭のシーンですが、メールと通話で連絡を取り合ってます。
3巻 (2010年刊行)
香田姉妹のそれぞれ。あと上司も二つ折りケータイですね。長女の幸はストラップみたいなのをつけていますが、先が切れている。性格を反映したものか、どうか。
4巻 (2011年刊行)
末妹のすずも携帯もってました。というか中学生サッカーチームのみんなが持って連絡網をつくっているっぽい(風太だけ家庭の方針で持っていない)。でもやっぱり二つ折りケータイ。右の画像では「将来ケータイ買ったとき」のためのストラップを貰ってます。ストラップつけられないからスマホは……みたいな人もいたよなぁ。
5巻 (2012年刊行)
あんまり関係ない話ですが、右のみたいな公衆電話、もうあんま残ってなさそうですね。中学生の少年が携帯電話をもってないのもめずらしいというが、福田さんのようなじーさんも持っていない。これはまあ別にいまでもリアルでしょうけど。
左はここまでの話とは無関係ですが、これより前の巻で香田家の家電がコードレスだった描写があったのに、ここではコードつきにもどってしまったのがちょっとおもしろくてキャプチャしてしまいました。
それはさておき5巻はここの描写も面白い。
あいかわらず幸は二つ折りケータイですが、ヤスのほうはスマホ(iPhone?)使ってる! たぶんこれ、本作におけるスマホ初登場シーンです。
6巻 (2014年)
すずがスマホに移行してる!! まめに保護フィルムつけてますね。
幸もか!! ヤスか? ヤスの影響なのか……?
すずはこの巻では携帯の地図アプリも活用しまくっています。
7巻 (2016年刊行)
で7巻のここのくだり。LINEですね(名前はちがうけど)。いつのまにやら姉妹全員スマホになってグループチャットで連絡していたようです。とはいえ、作中でも2年ぐらいたってるし、こういうのの移行は、まああっちゅーまではあります。7巻はこのあと修学旅行のシーンもあり、女子たちがスマホの地図アプリを活用しています。
コミュニケーションのツールとしてはこの “NYAIN” が最後まで使われることとなりました。二つ折りのフィーチャーフォンでメールする時代に始まって、スマホが登場し、しだいに誰もがスマホを使うようになり、やがてLINEが席巻してだれでもLINEで連絡を取り合うようになった、という世の流れがお分かりいただけたかと思います。
番外編:ラヴァーズ・キス (1995年)
ところで『海街diary』と切っても切れない関係にある作品といえば『ラヴァーズ・キス』です。この作品は95年発表とだいぶ古いので、この手の技術とは無縁のストーリーなのですが、登場人物が一部かぶっているので、時期の比定が可能になってしまう問題が……とおもいながら見ていたらこんなセリフを発見してしまった。
手前のキャラは「海街」のマサのアニキですが、中2のときに鎌倉にきて、本作では高1。この「じゃ震災だいじょーぶだったの?」というセリフがどういう意味かわからない方がいるかもわかりませんが、これはもちろん1995年1月の阪神淡路大震災のことです。
作中は初夏ぐらいの出来事とおもわれるので、このセリフとつじつまが合うのは95-96年ぐらいに限られることになります。ということは「海街」も90年代末の出来事ということに……? スマホとは……? NYAINとは……??
とまあ、くだらない細部にあえて着目してみましたが、もちろんこれはただの難癖のようなもの。こうした時代考証のようなものは軽やかに乗り越え、同時代的なストーリーを紡いできたのが『海街diary』の魅力だったのではないか、とあらためて感じました。みんながいつのまにかスマホに移行してたのに、読んでたときはとくに気づかなかったし。
そういうわけで、『海街diary』面白かったですね! ではまた!