Venba

以前にも何かの記事で見かけたような気はするけど、 rebuildfm で言及されたので思い出してプレイしてみた。

これは…………何と言ったらいいのかな、めちゃくちゃ心に刺さる作品だった、個人的に。日本での世間一般での評価で言えばそれほどのゲームではない気がするけど、刺さる人は自分の身近には多そうだなと思いました。

ゲーム単体としてはめちゃくちゃ他愛もないようなものだ。というかゲーム要素はかなり薄くて、ほぼストーリーを追いかけるだけで、要所要所でタミルの料理を作ることになるのをやるという感じ。料理の手順が一部わからなくなっていたりするので微妙に推測したり試行錯誤したりするけど、まあ別に全然難しくはない。常識的なものと勘ですぐできる。操作が難しいとかそういうこともない。操作していくと美味しそうなタミル料理ができてくのは楽しいけど、ゲーム的にいうと特筆すべきことがあるかというと、あんまないという気がする。主軸はストーリーテリングであってゲーム要素はおまけという程度とも言える。

メインのストーリーもさほど長くはなく、1~2時間くらいでサクッと終わってしまうんじゃないかなというぐらい。というわけでゲーム単体としての評価で言うとそこまででもないんじゃないかと思う。

けどメインのストーリーラインがめちゃくちゃ個人的にくるのだね。ストーリーは簡単にいうと、インドのタミル地方で生まれ育った女性が夫と一緒にカナダに移住して暮らすという半生を描くというものだ(タイトルのVenbaというのはこの主人公の女性の名前)。仕事が大変だったり、職探しで苦戦したり、文化の違いに苦労し、子供が生まれたら子供は英語ばっかり話すようになり、自分の文化であるタミルに違和感を持つようになり……という移民家族の苦労や衝突、和解を描いている。

こういうストーリーを褒めるのって難しい。正直なところよくあるものではあるし、ああそういうやつねと言われればその通りである。ありがちな話、ってまとめられるようなものかも。ストーリーテリングもシンプルで(それなりに想像力を発揮する余白は大きいものの)とりわけすごくよく描けているとか、ここの描写がすごいとか、そういうことがあるかというと、そんなでもない。インドのタミル地方という文化バックグラウンドについても、日本で生まれ育った自分にとっては馴染みがあるわけでもない。

でもやっぱりアメリカに移住して子供をなし育てている身としてはすごく切実に感じられてしまう(うちの子供はまだまだ小さいからここで書かれているような話は全くないのだけど)。rebuildでの話だとGDCでそれなりに評判だったということだけど、やっぱりそういう場にはアメリカとかカナダとかで働く人には移民1世や2世がそれなりにいて、世間一般とは全く違うレベルの切実さを感じてしまうからなんじゃないだろうか。そういうバックグラウンドのある人はやってみる価値のあるゲームなんじゃないかな、と思いました。

もちろんタミル料理の追体験という面白さもあります。ビリヤニ作ったりするよ! でもそれだけじゃないところで自分の心に刺さるゲームでした。広くおすすめなものではないけど、人によっては響くと思います。

https://en.wikipedia.org/wiki/Venba_(video_game)