月: 2016年3月

Charlie Jane Anders “All the birds in the sky”

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Charlie Jane Anders “All the birds in the sky

なんというかこう、面白かった。全体的に。

現代アメリカを舞台に、主人公の少女、パトリシアは幼い頃に森や鳥たちと会話するという不思議な体験をし、やがて魔女になるという夢を抱く。いっぽうもう一人の主人公となる少年、ローレンスは科学オタクで、いろんなものを自分で作るエンジニアになりたいと思っている。ふつうの生活から少し外れたふたりは、中学校の仲間はずれ同士として出会う。ふたりは道を分かち、やがて時は流れ……。

第一部は幼少期、第二部が中学生編、三部以降が現代っていう感じなんだけど、第二部が面白い。二人のささやかな交流、作った機械や魔法の話、どれも魅力的。魔術と科学という相容れない世界が不思議に面白いかたちで融合していると思う。こういうの好きだってのもあるなあ。ほんとうは二部までは伏線で本番のストーリーが炸裂するのは三部以降というのが著者の意図だとは思うけれど。

基本的なおもむきはファンタジー。現代社会に魔女たちの秘密組織があるような話だし。でも、この手のファンタジーによくあるような、自然を称揚するような単純なものでもない。その逆に、科学が魔法を解き明かすようなSFでもない。魔法と科学が融合するようなかっこよさも、べつにない。ただ単に両者が併存していて、でも基本的には両者は相容れない……けれども、主人公二人の関係性を通して両者が不思議な交わりを見せる。

派手さはないけど、良いものでした。

Performance@Scale雑感

少し前、なぜかPerformance@ScaleというFacebook主催のカンファレンスのinvitationをゲットできたので、行って聴講してきた。直接の仕事にはあんまり関係ないけど、どうやって高いパフォーマンスを実現できるのか、測定できるのか、といったテーマの話で、なかなか面白い話が多かった。

動画などが https://code.facebook.com/posts/997355933686556/performance-scale-2016-recap/ でまとめられているから見ると面白いと思う。

個人的に面白いと思ったのはパフォーマンスリグレッションの特定の話(Automatic regression triaging at Facebook)。実際のサーバについて様々な性能(応答時間とか)をグラフ化しておくと、まあ実際にはガタガタしているわけだけれども、うまいこと定義を作ればパフォーマンスが悪化したタイミングを捕まえることができる。これはまあ普通。で、その悪化したタイミングに変更を行った人にアラートを送って直してね、っていう。これもまあ普通だよね。

で、面白いのは、このスピーカーはfacebookの人なわけだけど、現実にはプッシュのタイミングは1日1回とか数回に限られるので、悪化したタイミングと言っても数百、数千といった変更が候補になってしまって、意味がないと。なのでこれをどう自動的に絞り込むかが鍵となる。でどうするかというと、悪化したパターンのコールスタックを取り、コールグラフからパフォーマンスに影響のある関数を特定して、その関数やコールスタックに影響のある変更に絞り込んで云々、というもので、なるほど面白い。まあこの問題がだいじになる世界というのはそれほど多くはないだろうけれど。

もうひとつ、Facebookのウェブパフォーマンスの話で、ストーリー自体は基本を押さえたものだと思うけれど、Facebook内のコードスニペットがとても面白かった。

というのは、PHPではなくてHackのコードスニペットな訳だけど、Hackこんなんなのか!というので驚いた。PHPに型注釈をつけたもの、というのが私の荒い理解だったのだけれど、さすがに荒すぎであった。

  • async/awaitなんてあるんかい
  • Awaitable<>のようなパラメトリック型
  • ScalaのようにHTMLの断片をコードに直接書けて、これがReactと統合されててReact DOMのオブジェクトになるらしい

などなど……Hack思ったより遥かに進化しているし、FacebookはもうPHPじゃないのかもなあと思ったのだった。

Facebook以外だと冒頭のBrendan Greggの話や、Chromiumのヒストグラムを解説するJim Roskindなどは面白かった。

Brendan Greggはかつてdtraceを開発していた筋金入りのパフォーマンスエンジニアで、話も面白かったのだが、「10年前もdtraceの話をして……それからキャンパスはだいぶ変わったけれど、トピックや解析の内容は変わっていない」っていう冒頭のつかみ、あとで雑談していて気づいたけど、Brendanはまさにそのころ、会場のFacebookキャンパスのあった場所にあったSUNで働いていてdtraceを開発していたっていう話だったのだなあ。時の流れに思いを馳せたりした。

ズートピアみてきた

ディズニー映画のZootopiaみてきました。

いやあ面白いしよくできている。ありとあらゆる動物が共存して暮らしている大都市ズートピアでウサギとしてはじめて警官となった主人公のジュディ、という子供向けのような設定と、体格も食生も違う動物たちがともに暮らすということによるダイバーシティ(多様性)を核に据えたテーマがうまく一致している。

映像的にも、冒頭の雨の降るシーンのような鮮やかな映像もすばらしいし、動物たちに合わせた都市デザインの面白さもあってよい。動物もそれぞれユニークに描けていて面白い。擬人的ではあるけれども動物らしさもあるディズニーらしい良さがあるなあ。Mr. Bigの椅子の手すりがかわいいとか細部も良いよ。

まあ一番笑ったのは全員ナマケモノのDMVのシーンで、だいたいトレイラーでカバーされてますけども。

アメリカの囲碁

ちょうどたまたま会社のski tripがあったので、僕はTahoeのホテルにいた。

ざっくりski tripと呼ばれていたけれどもスキーだけをするわけじゃなくて、ホテルの一室が解放されて、皆がゲームを持ち込んだりしていて遊ぶ部屋になっていたのだけど、囲碁を持ち込んでいる人がいて、軽く遊んだりして(僕はまあ7-8級程度なので教えてもらう立場ですが)、そこでAlphaGoの話が出てきた。今日初戦ですよ、ということで、じゃあみんなでみようよ、ということになった。

残念ながら大きなモニタもないし、ホテルのWiFiは腐っているので、携帯電話の小さい画面でみんなで視聴した。碁盤があるので、試合が進むごとにそこに碁石を並べる方式にした。他にもゲームをやってるグループが多数いるので、騒音で解説は全く聞き取れなかったが、その場にいる人たちとあれこれ話し合いながら見るのはかなり楽しいものだった。

それにしても、意外と囲碁人口って多いんだな、と改めて実感したものである。

もちろん中国系や韓国系、私のような日系の人々もいるけれど、そういう東アジアの人々以外のプレイヤーもかなりいる。集中して観戦していたのは私を含めて5-6人といったところ、周辺全部を足すと10人以上は見ていたか。だが東アジアの人々の割合は半分くらいだったろうか。また観戦する中で一番強い人は白人の人だった。

囲碁は確かにルールもシンプルだし東アジア特有のものというのもない。やりたい、という人がいればできない理由はどこにもない。それにしてもと思うのだった。もちろんエンジニアみたいな職種であるとか技術系の会社であるといった理由から、こういう変なゲームも嗜んでいる人というのが多いというのはあるわけで、全米で平均的にそこまで普及しているなどというのは幻想ではあるけれども、にしてもここまでかー、などと思ったりした(ちなみに日本人の同僚が将棋セットを持ち込んでいたけれども、こちらはあまり興味を示されていなかったようである)。

もう一つ面白いと思ったのは、囲碁用語だ。囲碁というのは中国が発祥なわけだけれども、英語圏における囲碁の用語はかなり日本由来である。コミ(komi)やコウ(ko)、定石(joseki)のような用語もそうだし、情勢について語られる用語であるコスミ(kosumi)、カカリ(kakari)、見合い(miai)、先手と後手(sente、gote)などの単語も全部日本語由来だった。一部訳されている語もあって目はeyesだし、受けに相当する語がanswerだということは今回初めて知ったけれども、まあともあれ、全般的には日本語由来がめちゃくちゃ多い。正直、解説を聞いていてもそこだけでちょっと面白い。

英語版の公式ストリーミングで解説していたのがマイケル・レドモンドというカリフォルニア出身ながら日本でプロ棋士になった人だから、かというとそうでもなく、わりと一般的に囲碁用語は日本語由来のものが多いようだ。どうも英語圏に囲碁が伝来した過程が透けて見えるようで面白い。

アメリカンドッグを作ろう

アメリカンドッグという食い物があります。ソーセージのまわりに衣がついたやつで、まあ駄菓子ですな。コンビニとかによく売ってますが、たまに食べたくなる。

なおアメリカではcorn dog(コーンドッグ)といいます。

そんな「なきゃないでべつに困ることもないが、そういやなんとなく食べたくなる瞬間もある」食い物のアメリカンドッグですが(しかしこの名前はどこから来たのだろう?)、家庭で作れると知って「それは作ってみなくては」と思ってはや数ヶ月。

作ってみた。

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うーんひどい見た目

手順(http://cookpad.com/recipe/408665 を参考に)。

  1. スーパーで適当なソーセージと串を買ってくる
  2. ソーセージはナマのやつだったら中まで火を通す。そんで小麦粉をまぶす
  3. ホットケーキミックスと牛乳で衣を作り、串を刺したソーセージにころもをつけ、揚げる
  4. 揚がったら出来上がり

揚げたりするし、意外と衣がうまくつかないので(写真の事例は牛乳が少なく、やや粘度が高すぎた)、綺麗に作るのはもう少し練習が必要かも。

味はまあ油と炭水化物と肉の味なので間違いはない。しかも自作の場合、ソーセージや肉の味の存在感が強い(ふつうのアメリカンドッグはやや淡白なソーセージがなかに入ることが多いと思いますが、自作の場合自分で決められるので……)。見た目はイマイチですが、正直これはどうやってもウマくなる味だなと思って、なかなか良いとは思いました。

難点はかなり不健康そうというところでしょうか。あとソーセージとかホットケーキミックスとかが余るんだよな。