月: 2019年5月

タサハラ禅センターに温泉はいりにいった

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シリコンバレー・ベイエリアから車で3時間ほど南下した山中に突然に(日本由来の)禅寺があり、そこは春〜秋まで一般の観光客もお金を払えば泊めてくれるところであるらしい。しかもそこには温泉があるのだとか。

その場所はTassajara Zen Center (タサハラ禅センター)という。妻がみつけてきて行きたいというので行ってきたが、これはかなり良かった。おすすめ。

行き方

行くにはまず予約が必要。ウェブで予約できて、毎年2月にその年の予約の受付が開始されるけど、週末とかの予定はすぐ埋まるので頑張って予約しよう。

予約すると電話で確認があって、自力で来るか、ピックアップ場所まで迎えに来るかどうするかを聞かれる。実はタサハラはものすごい山中にあって(地図でいうとここ)、途中で舗装路は完全に途絶してしまう。車でゆっくり1時間ほど、舗装されていない細い山道を進んでいく必要がある。なので舗装路の終点でタサハラの人が迎えに来てくれるサービスがある。これを利用しますか?というのが質問の意図だった。どれぐらい大変なのかよくわからなかったけど、われわれはこれを利用することにした。これを利用する場合は待ち合わせ地点に10時半に行く必要がある。この待ち合わせ地点まで、ベイエリアからだと約2時間といったところ。なので合計で3時間といったところだ。

今回われわれは待ち合わせ時間ちょっと前くらいに着いた。で指定の場所(なんとなく車をいっぱい停められそうな空間がある)に停車できる場所をみつけてしばらく待っていると、迎えのシャトル……というかふつうの4WD車……が到着。迎えの運転手(たぶん修行僧のひとり)とか、ほかの同乗者たちと挨拶して荷物を積み込んだりした。で、どうも一人おくれている人がいるらしい。がなにぶん遅れている人と連絡を取る手段がない(待ち合わせ場所も携帯圏外)のでひたすら待つしかない。30分以上まっただろうか、「これ以上待っても仕方ないし行こうか」というので一同乗り込んで出発した。遅れてきた人はあとで会えたけど、自力で山道を運転してきたらしい。

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道の写真はとらなかったけど、窓から撮った写真

山道はちょっと想像以上のラフな道だった。でこぼこの泥道で、道幅もそんなに広くなく、傾斜も激しく、そして意外と対向車が来る。スピードは出せないし気も使う。4WDを持っていてオフロードを走るのが趣味ならいいけど、正直自分ならピックアップサービスを使わない手はないと思った。運転手の人が言っていたが、つい去年にも運転を誤って崖から転落したという死亡事故があったのだという。

運転手の人はほかにもいろんな話をしてくれた。タサハラはもともとネイティブアメリカンの言葉で、肉を乾かす、といった意味があるのだとか(タサハラ、山中の避暑地みたいなイメージだったけど、実は夏はずいぶん暑くなるらしい。大昔はネイティブアメリカンが住んでいたのだともいう)。タサハラの修行ってどう、とか。まあそんな話とか、同乗者のおしゃべりとか、自分の名前の意味とか、そういう他愛もない話をしているうちに、たどり着いた。

タサハラの設備

タサハラは山奥の小川に沿ったちょっとした谷間のような場所にある。Tシャツや本といったちょっとした土産物もある受付でチェックインを済ませ、簡単に注意点とかをおしえてもらう。周囲の施設は禅堂とか食堂、われわれのようなゲストの客間、温泉、あとは修行者たちの部屋などくらい。禅堂は日々のお勤めのほか、瞑想のクラスとかもある。

食事の時間以外はあまりやることはない。ハイキングとか、散歩とか、本を読んだり、写生をしている人もいたかな。あとプールがあった。プールは小さいけど温水プールだという話で、わりとふつうのプールっぽかった。ほかにもヨガとか瞑想とかのワークショップに参加している人が多そうだった。われわれは軽くハイキングをして、開祖の鈴木老師の碑を見たり、近くの滝を見にいったりした。

部屋の文明度がまったくわからなかったのでもしかしたら夜まっくらかもと思っていたのだが、われわれの泊まった部屋だと明かりはもちろんコンセントもあって拍子抜けした。携帯の充電とかも全然可能。まあ充電しても使いみちはないけれど。といいつつ、ぼくはダウンロードした電子書籍を携帯電話で読んだりもしていた。

温泉

われわれの主目的は温泉だったわけだけど、温泉はかなりよかった。男女にわかれ(なぜか女性は男湯に入ってもよいというルールがあったが)、ふつうに風呂に入れる。内風呂があり、開放的なテラスがあって川を臨むテラスに出られる。テラス脇には露天風呂があり、その隣にはサウナもある。サウナ脇には水風呂はないのだけど、そのまま階段を下るとそのまま川の清流に入れるようになっていてこれが水風呂として機能している。みんなテラスで寝っ転がったりのんびりしていて雰囲気もよい。泉質については語彙がないので多くは言わないが、肌はものすごくツルツルになった。

けっきょく24時間で4回はいった気がする。宿舎からはやや遠いので、あまり夜遅い時間に行くなら懐中電灯などがあったほうがいいだろう。

食事

ゲストには朝昼晩の食事が出る。禅寺なので料理はベジタリアン。でも和風ではなくて洋風なのが面白い。初日の昼は豆のスープとサラダとパン、夜は焼ポレンタときのこソースに野菜炒め、翌朝はグラノーラとヨーグルトにマフィン、昼は葱ポテトスープとサラダとパン、といったところ。味はどれも美味で、けっこうお腹いっぱいになる。それにしてもこういう食事をしていると、なぜ日本では仏教の戒律のわりにチーズとかの乳製品が流行らなかったんだろうか、とちょっと不思議になる。いやそれは東アジアの仏教国だいたいみんなそうかもだが……。

ところでタサハラのパンは有名なんだそうで、も出ていてパン自作派のバイブルみたいになっているのだとか。食べてみると、びっくりするほど美味い!というものではない。でもなんというか、しみじみとうまくていっぱい食べれる。そういうところが魅力なのだろう。

夕方のスナックの時間もあったんだけど、これはのがしてしまった。

ちなみにお茶を出す給湯スペースみたいな場所が24時間開放されていてお茶は各種飲み放題だ。

帰り

そんなこんなでわれわれは一泊を過ごした。一泊だけというのはかなり短いようで、行きのピックアップの同乗者からは呆れられていた。たしかにこれは長期逗留したくもなろう。

われわれのように自力でタサハラにたどり着かなかった場合、帰りも同じように車に乗せてもらって待ち合わせスペースまで帰してもらう必要がある。便は日にいくつかあり、何時の便に乗るかはチェックインのときに確認した(いつでも受付にいけば調整可能だろうけれど)。われわれは3時の便に乗った。

帰りの運転手が、Tassajara(タサハラ)という言葉の語源について新説を教えてくれた。ネイティブアメリカンの言葉だとか意味はどうだとか、いろいろ言われているけど、どうやらスペイン語が語源らしいんだよね、と。まじか。語源、混迷を極めているな。

そんなこんなで乗っていると同乗者の女性がちょっと停めて、という。で道端の草を摘んでいた。これはネイティブアメリカンの薬草で健康にいいのだという。お湯で煮出して飲むといいから。あなた体調わるいから(実際ちょっと風邪気味だったのだ)あげるわよ、とかいって薬草をもらった。帰ってからいわれたとおりに煮出した苦い薬草茶を飲んでみた。その夜、妙な高熱が出て寝込んだが、これが薬草茶の作用なのか偶然かはわからない。翌朝起きたらスッキリしていた。薬草の名前はきいたが忘れてしまったのでわからない。


最後のくだりはさておき、なんとも夢のような体験ではあった。インターネットの浮世とはなれ、本を読んだり温泉にはいったりしながらのんびりとすごす場所。わるくない。ネットと隔絶するからかなんなのか、サウスベイにありがちなテック企業の人々とはあまり出くわさなかったように思えたのもよかった。モントレー在住の整体師とか、サンタクルーズに住んでもう毎年きているおばあさまとか、そういう人たちが多い(高齢者が多い)。カリフォルニアの地にあって禅寺というのは、かなりスピリチュアル色がつよい場所であって、自分はそういうのはけっこう辟易とするのだけれど、でも楽しめる場所ではあった。

また来たい。