月: 2023年1月

Becky Chambers “Monk and robot” series

https://us.macmillan.com/series/monkrobot

なんとなく本屋で見かけて手に取った本だけどかなり面白かった。『銀河核へ』の邦訳もあるベッキー・チェンバースのシリーズで、中編2本で構成されている。一本目のタイトルは A psalm for the wild-built、二本目のタイトルは A prayer for the crown-shy

パンガという世界が舞台で、そこではロボットたちが自意識に目覚め、人間と別れて生きることを決めた。それから時は流れ、人類はAIや知的なロボットといった存在とは無縁の生活をしてきた。人類の住むべき領域と、ロボットたちの領域である Wild が分かれ、人間たちは自分たちの領域で生きてきた。時は流れ、ロボットたちの存在はもはや神話のようになっていた。

主人公のデックスは tea monk という、悩みを持った人に茶を提供しつつ話を聞くといった仕事をする人間。 tea monk としては成功を収めたデックスだが、人生に思い悩み、本当にちょっとした理由から禁断の Wild に踏み込んでしまう。そこで出会ったのがロボットのモスカップ。モスカップもモスカップで、長い時をへて改めて人間と接触しようとしていたロボットだった。ロボットたちの質問は一つ — 人類は何が必要なのか? (what do people need?)

デックスとモスカップはそれから Wild を少し探索し、そして次に人間社会に出ていく。一作目は主にロボットたちの生態(というのかなんというのか)やあり方が詳しく描かれ、二作目は人間社会が詳しく描写されている。どちらもそれなりにユニークで興味深い。デックスとモスカップのユニークなキャラクターも味わいがあり、二人の対話も飽きさせない。どちらの作品ともちょっと癒やしっぽいオチがついていて読後感も悪くない。いや面白かった。正直なところ、『銀河核へ』は翻訳で読んでいて途中でダレてしまって投げ出したのだけど、英語で読み直そうかなと思ったぐらい。

本作は「ソーラーパンク」として書かれたと言われていて、自分にはあまり詳しくない用語だった。サステナブルエナジーとかエコみたいなテーマを扱った作品ということで、2009年に提唱されたものらしく、作例はそれほど多くはないようだった。事後的にル=グウィンの『オールウェイズ・カミング・ホーム』や『所有せざる人々』がソーラーパンク作品ということにされているらしい。なるほどそれでこういう人類社会なのかね、と腑に落ちるところもあったりした。

そういうわけでなかなか良かったのだけど、本作は邦訳は非常に難しいんじゃないかなという気がする。それは主人公であるデックスの性別に起因する。デックスは男性でも女性でもなく、作中では常に singular-they が使われている。修道僧(モンク)なので敬称がつけられるが Sibling と呼ばれている(Sibling Dexという表記が多い)。が、すべての人がそうなのではなく、男性なら僧なら Brother がつけられるし、でなければ Mr. がついたり he で呼ばれる人もいるし、女性なら Sister / Ms. / she が使われている。デックスは特別な存在ではなく、ほかにも Sibling や Mx. のついた登場人物は普通に出てくる(ちなみにロボットには it が使われている。モスカップ自身がそうしろというくだりもある)。

この人類社会の性別はどのようになっているんだろうか、というのは興味の一つでもあったし、これが解決しないと翻訳は難しいだろうなという気もする(解決してもぎこちない翻訳になりそうでそれはそれで興をそぐ気がする)。が、2作で終わりだということだがその辺はあまりはっきりとは説明されなかった。単に自己の決定によって Sibling / Mx. / they を選択するのか生まれながらそうなのか、外見だけでわかるような違いがあるのか、みたいなことが気になっている。LGBTQテーマのSFとしてはそこは追求するべきではないような気もするし、だからこそちょっと曖昧なところで終わらせてるような気もするけど、翻訳するとしたら大変そうだなと思った。

短いしそれほど難解な話ではないので、英語で読んでも大丈夫な人は読んでみてください。おすすめ。

日本に滞在していた

年末年始にかけて日本に2週間ほど滞在していた。といっても主に親戚との年末イベントがメインで、あまり人にあったりしなかった。子がまだ小さいこともあり、映画を見たりといった余暇もなし。本はちょっとだけ買ったが子供の絵本が多かった。

日本の生活

今回はairbnbで部屋を借りた。子供が小さいので、家具や食器・台所付きで寝室が分かれている部屋というのが助かる。都内ということで蒲田近郊に滞在していた。外食はそこまでせず、基本的には部屋で自炊。それか親戚の家にいくか。

前回に帰った時も思ったけど、「まいばすけっと」がそこらじゅうにあってとにかくびびる。なんなんだろうあれ。東京で一番店舗数のあるのまいばすけっとなんじゃないか。あんなに店舗があって利用客がいるものなんだろうか。こちらもある程度は自炊するのであると安心感はある。が、結局は普通のスーパーマーケットの利用がメインでまいばすけっとはそこまで使わなかった。

パンデミックの影響なのかどうかは定かではないけど、クレジットカードやコンタクトレスな支払いのオプションはかなり充実してきたと思う。現金の利用は結構減ってきたなという感じがある。まだ必要ではあるけれど。

zipair

行き帰りの飛行機にはzipair Tokyoを使った。zipairはLLCで、とにかく安かった。サンノゼ-成田便は就航してすぐということでご祝儀価格で割引だったのかね。あそこまで安いなら仕方ないというぐらいの安さ。

ただ安かろう悪かろうということはなく、体験はかなり良かった。まず機体はBoeing 787なので広く快適だった(zipair全体で787しか使わないことでコストを削減するということもあるらしい)。フルフラットシートもあるが、6歳以下の人は使えないという制限があり、そちらは使わず。職員やCAの人当たりも日本らしく丁寧。

一方で予定変更が一切できず、様々なものが有料化している。例えば預け入れ荷物も有料で、重さによって値段が変わる。機内食も有料で事前に頼んでおく必要がある。水すら有料なのはちょっと困った(水筒を持って行って入場後の空港で汲んだりしたけど足りなくなったりした)。また席にはディスプレイが付いていないので、機内で暇つぶしをするには自分の携帯電話かタブレットを利用しないといけない。

とはいえ実際には機内食そんなに美味くなくて微妙な気持ちにもなるからなくてもいいや、子供向け機内食もほとんどベビーフードみたいになっていて自分の子にはそぐわない、といったこともあるから、機内食がオプショナルなのは意味があった。今回行きは(自分用には)smash burgerを買って、帰りには寿司岩の鯖棒鮨を買っておいた。子供にも子供用の食事を持っていくことにした。

席にはディスプレイは付いていないが、実は機内エンターテイメントシステムが存在しているというのも面白かった。機内wifiが完備されていて(インターネットにも繋げるという話だったがこれはほとんど使えなかった)、機内wifiから機内サービスに色々アクセスできる。食べ物の注文や現在位置の表示のほか、機内wifiからだけ見える映像コンテンツ(映画とか)もあった。事前にNETFLIXとかでデータをダウンロードしておいたんだけど、そこまでする必要は実はあんまりなかった。なので意外と機内の体験は悪くない。

天候の問題で欠航になったりするとかなり困る気がするが、そういうリスクを除いてはzipairかなりいいという印象。

wingz

空港と自宅の行き来にはwingzというアプリを使った。Uberみたいな配車サービスだが空港送迎に特化していて、皆の車がデカかったり、チャイルドシートを指定できたり、航空便の予定に合わせて予約できたりする。子供が小さいので(この記事そればっかりだが)チャイルドシートがあるというのが大きい。普通の配車サービスやタクシーでは対応できないからね。従来型のシャトルサービスでも良かったが、アプリというだけあって体験は色々良かった。担当してくれたドライバーの人も感じがよく良い体験だった。

その他の事柄

時差ボケ。一般にアメリカから日本への方向の時差ボケは楽で日本からアメリカの方向はきついということが言われている気がするが、今回は日本の最初の数日の時差ボケがひどかった。夜中の1時に爽快な感覚で目覚めてしまい、同じ頃に起きてしまった子と「もう朝かね、おきますか」と起きてから時間を確認したら深夜でびっくりしながら慌ててふたたび寝かしつけるという失態を犯したくらい。逆に日本からアメリカの方向では、夕方に乗ると朝に着く時間帯の便だったことと、子供の世話のサイクルに気を取られたからか、今のところそれほどキツさを感じない。もっとも妻はアメリカに戻ってからの時差ボケがかなりキツそうなので人によるとしか言いようがない。

上野の科学博物館に行った。特別展(毒展)は並んでたので常設展のみだったけど、よく考えてみると常設展をじっくりみたのは初めてかもしれない。フタバスズキリュウの展示とか見応えがあって良かった。

川崎水族館にも行った。カピバラに餌をやったりした。あとしながわ水族館(品川駅近くにあるやつではなく大森海岸にあるやつ)にも行ってイルカのショーを見たりした。多摩動物公園にも行った(坂がすごくて子供を抱えての移動が結構な運動になった)。子供にこういう体験がよかったのかどうかはよくわからない。子供はグッズ販売エリアのガシャポンのレバーをガチャガチャ動かすのが楽しいようでそこでずっと遊んでいたような気がするが、まあそれでよし。