小川一水『砂星からの訪問者』

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こっこれは……竹本泉?

朝日ソノラマからのSF『臨機巧緻のディープブルー』の続編。外宇宙に進出するようになった人類が異星人たちの観察と交渉のために作った「ダーウィン機関」なる組織がある、という設定で、ダーウィン機関のとある艦隊に帯同するカメラマンを主人公に、様々な異星人との遭遇や交渉を描くシリーズ。

前作は単体として楽しめば良い本だったけど、今回は続編ということで前回の結末から話を繋げつつシリーズ全体としての主人公の目的が提示されるくだりがあるので、前作は読んだ方が良いかんじになっている。

で、その序盤を終えると、今回のストーリーの主軸となる異星人「フィーリアン」との遭遇となるわけだけど、この設定はなんというか、唸らされた。端的に言えば既視感を覚える設定ではあって、読みながら「アレかな」とか「ああそういうやつか」と大まかな部分は推定できるんだけど、細かい部分はけっこうなひねりが加えられている。

このひねり方は小川一水の独特の境地であって、これが面白い。こういう設定のSFは過去にあったけれども、こういう設定からこういう設定までを引き出した作家は他にいなかったのではないか。最後まで読むとちょっとそれはないんじゃないか……という感想も個人的には出てくるけれども、それも含めて味だと思う。