芝村裕吏『セルフ・クラフト・ワールド1』

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これは面白かった!

オンラインゲームのゲーム内世界が舞台。このゲームではモンスターに人工生命的なアプローチが組み込まれており、いつしか人間の想像を超えた独自の進化を遂げた生態系を構成している。この生態系を学術目的で調査しているところに陰謀が……というのが主なあらすじ。

ユニークで良いなと思うのは、視点人物にゲーム内のNPCである村人の娘としているところ。主人公は調査のために訪問した男 GENZ とたまたま遭遇し、その調査と謀略に巻き込まれてしまうという設定になっている。そのため視点人物は外の世界のことはまったくわかっていなくて、すべてをゲーム内の事象との対比によって理解しようとすることになるし、ゲーム外のことがいっさい語られないことによってディティールを省きつつ手際よく世界観が提示できている。

非常によく書けていてよいと思うし、ありそうだが意外となかった設定、オチのそれかという感じ、なによりゲーム畑である著者らしさがいい具合に出ているところなど、とてもよいと思う。 GENZ のかなりネトゲ廃人らしいところなど、そういう方面への目配せも効いていて面白い(し著者らしいところ)。この著者のハヤカワでの著作では一番だろうな。

三部作シリーズらしいので続編も楽しみ。