Charlie Jane Anders “All the birds in the sky”

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Charlie Jane Anders “All the birds in the sky

なんというかこう、面白かった。全体的に。

現代アメリカを舞台に、主人公の少女、パトリシアは幼い頃に森や鳥たちと会話するという不思議な体験をし、やがて魔女になるという夢を抱く。いっぽうもう一人の主人公となる少年、ローレンスは科学オタクで、いろんなものを自分で作るエンジニアになりたいと思っている。ふつうの生活から少し外れたふたりは、中学校の仲間はずれ同士として出会う。ふたりは道を分かち、やがて時は流れ……。

第一部は幼少期、第二部が中学生編、三部以降が現代っていう感じなんだけど、第二部が面白い。二人のささやかな交流、作った機械や魔法の話、どれも魅力的。魔術と科学という相容れない世界が不思議に面白いかたちで融合していると思う。こういうの好きだってのもあるなあ。ほんとうは二部までは伏線で本番のストーリーが炸裂するのは三部以降というのが著者の意図だとは思うけれど。

基本的なおもむきはファンタジー。現代社会に魔女たちの秘密組織があるような話だし。でも、この手のファンタジーによくあるような、自然を称揚するような単純なものでもない。その逆に、科学が魔法を解き明かすようなSFでもない。魔法と科学が融合するようなかっこよさも、べつにない。ただ単に両者が併存していて、でも基本的には両者は相容れない……けれども、主人公二人の関係性を通して両者が不思議な交わりを見せる。

派手さはないけど、良いものでした。